「記憶の中の小説」(壱)アトランティスのこころ。
2011年02月10日 (木) | 編集 |
テレビのリモコンとマウスばかり手にしているかと思えば、
旦那の部屋は新旧折々の文庫本が積まれていたりする、一体いつ読んでいるのやら

・・心に残る小説と、脳裏に焼き付く小説がある。
スティーブンキングの“アトランティスのこころ”は、自分にとって後者である。

スティーブンキングは、日常に潜む不思議や恐怖の描写が上手なストーリーテラーである。
アトランティスのこころは、彼が五十二歳のときに書かれた長編小説。
キャリー、シャイニング、ファイアスターターのように、ホラーらしいホラーではなく、
ショーシャンクの空に、グリーンマイルのように、心を締め付けられるモノガタリである。

第二次世界大戦後のアメリカがアメリカらしかった時代。
ピースマークに象徴される反戦運動、彼らが掲げた理想と失墜、限りない挫折と喪失。
主人公ボビーの幼年期から晩年までの生涯が、切なくも痛々しいエピソードと共に語られる。

読み終えた後、感情移入が過ぎて、喪失感がトラウマとなって脳裏に焼きついた小説である。
谷崎潤一郎の“痴人の愛”や、夏目漱石の“こころ”、もまた然り
再び手にとることが切ない、が、決して記憶から消え去ることもない、そんな小説である。
(「記憶の中の小説」(弍)につづく)


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